Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

自然消滅したサークルの未完成作品の体験版を今も置いているミラーサイトという同人ゲームの歴史を支える隠れた功労者

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同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com

 ふと、とある未完成同人ゲームのことを思い出して検索すると、こんなサイトがヒットしました。

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https://kokoron.madoka.org/mirror/D/saikolo.html

 いわゆるミラーサイトというやつです。アクセス集中の際の不具合を避けるために、容量の大きいファイルはゲーム専門のミラーサイトに置かせてもらうというのは、今も珍しくないと思いますが、とりわけレンタルサーバーという業種が発展途上であり、個人サイトが脆弱だったゼロ年代には多く見られました。

 さて、今回取り上げるのは同人サークル彩頃望磨によるビジュアルノベル『契剣(ちぎるけん)』。体験版がリリースされたのは2007年です。『月姫』『Fate』の流れを汲む伝奇系ビジュアルノベルのブームもそろそろ落ち着いた頃でしょうか。
 当時活発に同人ノベルゲームのレビューを行っていた私は、この体験版のレビューも残していました。こんな感じです。


―殺人鬼と美少女の契約―

 同人ノベルゲームの大定番である、活劇要素を交えた現代物語。「ちぎるけん」と読む。ちなみにサークル名は「サイコロボード」。

 主人公の黄昏真異(たそがれまこと)は700年続いた殺人鬼一族の青年で、殺人鬼を殺す『異端』という分類をされる殺人鬼。ある日、 仕事の最中にヒロインの黒原麻帆と出会うことで物語の幕は開く。設定から出だしまで、当世人気の殺伐系ライトノベルといったところ。 麻帆は真異に依頼を申し込むのだが、その際に取る行動に、美麗グラフィックもあって驚きだけでなく奇妙な美しさも感じた。真異がOKしたのもむべなるかな。

 ストーリーはわりと淡々と進み、日にちが経つのも速い。1日1日をじっくり書くタイプのノベルゲームが多い中で、ペースがいいといえるかもしれない。真異は殺人鬼ではあるが決して感情移入のできないような外道ではない。体験版ではバッドエンドも用意されているが、 こういう感情も持てるんじゃないか、と少し感動。麻帆との出会いでいかに真異が変わるか……というのが主軸のようで、先が気になる。

 様々な異名を持つ殺人鬼たちとの戦闘が楽しみ。ぜひともグラフィックのよさを生かした、緊迫感のあるシナリオ展開を期待したいところ。


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 私だけでなく少なくないユーザーが期待していたことを覚えていますが、このサークルはもうずいぶん前になくなり、ゲームも未完成に終わっています。

 

 しかし面白く、同時に頼もしいと思うのは――こういうのは失礼かもですが――ほとんど誰からも忘れ去られている、自然消滅したサークルの、未完成作品の、体験版を、今も置いているミラーサイトという存在です。

 同人ゲームの歴史を考えるとき、発表の場というものがとても大事だと思い至ります。コミックマーケット等の即売会、とらのあなやメロンブックスといった同人ショップがその代表として挙げられるでしょう。
 そしてミラーサイトです。ゲームを完成させる前のファイルを置いてくれる――これこそが同人ゲームの発展を支えてきた陰の功労者ではないかと思います。

 今も、無数の無名作品がそこには置かれています。作りかけで、いかにも拙い、しかし確かな情熱が込められたゲームの数々。同人ゲームの歴史をまとめるときに、きっと重要なデータベースとなってくれるはずです。