Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

伝説のCLANNAD二次創作ノベルゲーム『NETANNAD』作者が送るオリジナル長編ノベルゲーム『実験的なテアトロ』が十数年の時を経て小説で完結を目指すという話

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『NETANNAD』という作品をご存じでしょうか。ゼロ年代に熱心にフリーゲーム、同人ゲームを追っていた人なら覚えているかもしれません。
 Keyの名作『CLANNAD』は、当初2002年発売予定とされていましたが、開発は長期化し、リリースされたのは2004年でした。その間、待ちきれなかった匿名掲示板の住民たちが「だったら自分たちで作ろう」 と宣言し、ついに原作の発売前に完成させてしまったという逸話を持つ作品です。冗談のような本当の話。

『NETANNAD』のキャラクター設定は完全なオリジナルで、主人公とヒロインが核戦争後の未来に飛ばされるという衝撃的なオープニングです。元いた町に戻る術を探すために死力を尽くすという内容で、原作のイメージがかけらもないほど常時シリアスでした。そして文章力はかなり高く、特に台詞回しにはセンスを感じさせました。よくもここまで完成度の高い作品に仕上げたものだと、当時感心した覚えがあります。
 あいにくと『NETANNAD』はしばらくして公開停止になり、現在はプレイできませんが、ネット上にはいくつか紹介記事やレビューが残っています。

netannadとは (ネタナドとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

NETANNAD -ネタナド-[フリーゲーム夢現]

 さて、そんな力作を完成させたのは結社スメールというサークル。次回作には少なからず期待が集まっていましたが、やがてオリジナル同人ノベルゲーム『実験的なテアトロ』の制作が発表されます。2007年には体験版がリリースされました。現在もベクターからダウンロードできます。あらすじは以下の通りです。

 梅雨もようやく明けようとする夏のはじめ。公演を間近に控えた即興劇団『ヒステリカ』は、最終の追いこみに余念がない。

 脚本のない即興劇という特異な芸風と堅苦しい規律ゆえに、存続が危ぶまれていた弱小サークルではあるが、春には待望の新入団員を迎え、新たな体制での第一歩となる節目の公演である。

 裏方の手配も終わり、大小の道具もあらかた準備でき、あとは仕上げの調整を残すのみ。

 最後の日曜日は舞台前特有の緊張を孕みつつも、いつも通り気の置けない遣り取りのうちに幕を閉じる。

 だがそれは同時に、まるで劇中の世界が現実に溶けだしてくるような、不可思議で過酷な最後の一週間の幕開けだった……。

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 この体験版が非常に評判よく、完成が待ち望まれていました。しかしながら開発は難航したようで、ついに完成することはなかったのです。
『実験的なテアトロ』は普通ならここで、未完成ノベルゲームとして一部の人の記憶のみに留まる作品になったはずですが、つい最近、驚くべき動きがありました。小説投稿サイトのカクヨムで連載開始していたのです。

kakuyomu.jp

 まだ連載中で完結はしていませんが、実に十数年越しに表舞台に発表されたのです。サークル公式の掲示板やTwitterではずっと待っていたという声も見られました。なおこうしたケースは他にもあり、サスペンス同人ノベルゲーム『ABYSS -殺人クラブ-』の商業リメイク作が企画中止されたのち、シナリオだけ無料公開されるという事例を紹介したことがあります。

商業リメイクも計画されていた良作同人サスペンス『ABYSS -殺人クラブ-』

 完結しなかった同人ノベルゲームは、それこそ星の数ほどあります。しかしこういう形で完成させる道もある……。かつて完結を断念してしまったクリエイターたちにとって、少なからず希望の光となるニュースではないでしょうか。