Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

小品、しかし大きな可能性の実験作『KaleidoScopic』レビュー

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 今回のフリーゲームレビューは、いりえさん(@IriethotADV)の『KaleidoScopic』です。いりえさんは元商業ゲームプランナーで、最近ゲームライター活動を開始された方です。Twitterでは日々、ノベル・アドベンチャーゲームについてのさまざまなツイートをされており、私も注目しています。
 で、昨年にリリースされていたのが本作です。ブログでの紹介記事を見ると「アドベンチャーゲームを第三視点から見た時の考えを反映」とあります。アドベンチャーゲームで第三視点というと、かの作品以外にはたぶんないと思います。
 ともあれ私はこのジャンルにおいて、そういった独自のコンセプトが非常に大切だと日々思っているわけで、それを感じながらプレイしました。

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 登場キャラクターは男子学生の主人公と、ヒロインの女の子ふたり。いくつもの選択肢を選んだ末に、結末が枝分かれしていく――と、内容は至って普通の恋愛ものです。
 しかし選択肢自体に工夫が凝らされています。ちょっと抜粋すると――

いずれにせよ、僕は学園に行かなければならないらしい。

  • 制服に着替える
  • 私服に着替える

僕は軽い足取りで学園に向かった。
…そういえばうちの学園って

  • 制服だった…。
  • 私服登校OKだ。

 通常のノベル・アドベンチャーゲームは「作品世界がそれに合った選択肢をプレイヤーに用意する」ものですが、本作は「プレイヤーの選択が作品世界を一から作っていく」といった趣なのです。
 この作品をプレイして思い出したのが、2005年にリリースされたグロビュールの『cubic3』というフリーゲームでした。

ch.nicovideo.jp

※あいにくとダウンロード不可になっているようです。

『cubic3』は選択肢により時系列と語り手が変化するという、きわめて独創的な挑戦をしていた作品でした。見る角度によって模様が変わるキュービックのごとく、プレイヤーの選択によって千変万化する作品だったのです。まあ、それだけに内容は難解だったのですが。
 その点『KaleidoScopic』は普遍的なギャルゲーのフォーマットを用い、きわめて平易です。プレイヤーが選択肢で世界に干渉する――作者さんはゲーム制作ツールを使っての制作が初めてだったこともあり、この構想を十全に実現することは叶わなかったとのことですが、そのコンセプトの片鱗はしっかり見て取れました。ちなみにタイトルは万華鏡のような、という意味です。本作の企画書と設定がnoteで公開されているので、興味のある方はどうぞ。

自作ADV『KaleidoScopic』企画書&設定公開…「ADVとして目指したもの」|いりえ @IriethotADV|note

 今やノベル・アドベンチャーゲームはストーリーのみならずギミックが重要になっている……とは当ブログでもたびたび触れてきました。『KaleidoScopic』のようなコンセプトを、本格的な大作の企画として実現できたなら、とても面白いものができるのではないでしょうか。