Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

『1999ChristmasEve』がなければFateはなかったかもという話

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 以前このブログでも書いた【世界のビジュアルノベルゲームは今。第3回「ビジュアルノベルゲームの過去・現在・未来」】に、昨夜参加しました。

【世界のビジュアルノベルゲームは今。第3回「ビジュアルノベルゲームの過去・現在・未来」】に参加します

 アドベンチャーゲーム研究家である福山幸司/なべやきさん(@fukuyaman)の、徹底して資料に当たる姿勢は日々Twitterを拝見して知ってはいたのですが、こうした発表会の形だと、それがさらによくわかりました。国内海外問わず、古今東西のあらゆる資料からノベルゲームの歴史を非常にわかりやすくまとめていました。福山さんはぜひ、ノベルゲームの歴史を網羅する本を出版するべきだと思いましたね。

 福山さんはインディーゲームについても触れていたのですが、中でも「おおっ」と思ったのが、『1999ChristmasEve』を重要な作品のひとつとして(名前だけですが)紹介していたことです。『1999ChristmasEve』については以前も記事を書いたことがありますが、フリーのホラーノベルゲーム好きなら知っている人が多いでしょう。

www.araicreate-blog.com

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懐かしのタイトル画面。

 この作品は当時としては破格のクオリティで人気を集めましたが、それ以上に私が重要視しているのは、現在も愛用されているノベルゲーム制作ツール「吉里吉里/KAG」を最初に採用した作品ということです。吉里吉里の歴史は『1999ChristmasEve』から始まったと言って過言ではありません。
 そして、このツールの初の解説書である『吉里吉里/KAGではじめるゲーム制作』のあとがきに、興味深い記述があります。

思い起こせば1999年の12月。

 

軽い気持ちでダウンロードした吉里吉里のサンプルに衝撃を受け、こんなすごいツールを制作しているのはどんな人なのだろうとサイトを訪問させていただいたところ、おや、と思える一文を発見しました。

 

1999/8/24 進捗
なんか、吉里吉里本体は開発が止まっているというか、なんというか。使ってくださっている人からのレスポンスが今のところ皆無に等しいので(泣)

 

モニタに向かって「こんなすごいソフトなのになぜだ!?」と声に出して叫んだ自分は、「このままではいかん」と焦りました。4ヶ月も前の発言でこの状態では、すでに開発者のモチベーションがどん底まで落ちており、ひっそりと闇に葬られてしまっているかもしれぬ。メールを出そう。出して、ここに一人でも応援している人間がいることを伝えねば!

 吉里吉里開発者W.Deeさん(@wdko)の「モチベーション低下」を、本書の共著者であるPIA少尉さんが察したという内容です。PIA少尉さんはちょうどこの1年後、『1999ChristmasEve』をリリースします。
 もし両者の出会いがなければ、吉里吉里は開発が中止されていたかもしれないわけです。そうなれば、2004年に発売しつい先日復刻版が出た『Fate/stey night』も、少なくともあのクオリティでは完成しなかったでしょう。当のW.Deeさんはこのように語っています。

1999ChristmasEveはKAGの基礎を固めるのに大きく関わったし、Fate/stay nightはマスユーザへの最初の露出で品質の向上に関わり、派手な演出で性能の向上に関わった。

 たったひとりのメールが制作者を鼓舞し、開発継続を後押しする。こうしたことがあるわけです。ツールの解説書にもノベルゲームの歴史の一端が書かれていたりするから面白いですね。