Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

彼をいつまでもエミヤではなくアーチャーと呼びたい古参Fateファンの他愛ない戯言

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 先日、『Fate/stay night+hollow ataraxia 復刻版』が発売されることがTYPE-MOONより発表された。

 最新OSに対応していないなどの関係で、かつて人気を誇ったPCゲームがプレイできない問題は、年々大きくなっている。2004年に発売されたオリジナル版のFateは当然のことながら、2014年に発売されたセット版の『Fate/stay night+hollow ataraxia』も、正式に対応しているのはWindows 8まで(それもバカらしいほどのプレミア価格が付いている)。
 PS Vitaやスマートフォンにも移植はされてきたが、これはオリジナルとは若干異なる全年齢対象だ。特に現在劇場版が進行している第3ルート『Heaven's Feel』は、18禁でこそその凄惨かつ淫靡なストーリーが活きる。やはりオリジナル版でなければ、桜という少女の神髄に迫ることはできないと思うのだ。

 

 さて、今回の復刻版のメインターゲットは、長年のファンというよりはやはり『Fate/Grand Order』からFateワールドに入った人たちだろう。これがいったいどれくらい多いのか、ちょっと想像できないほどに違いない。
 そしてその人たちが、すでに知っている――知ってしまっているのが、サーヴァントたちの真名だ。

 Fateの楽しみのひとつが、ストーリーを読み進めながらサーヴァントたちの真名を推理することだった。
 FGOにも一部その要素はあるが、この最初のFateの考察の楽しさには残念ながら及ばないだろう。今からすれば笑い話だが、セイバー(アルトリア)の正体がジャンヌ・ダルクだと思っていた人は少なくなかった。

 とりわけ、彼――アーチャーの正体はFateという物語の根幹を成すものだった。
 主人公・衛宮士郎が目指した正義の味方。その成れの果て。FGOでは料理の得意な良きお兄さんポジションにすっかり収まっているが、

―――英霊エミヤ。

 この一文を初めて見たときの衝撃は、今も忘れることができない。
 黒い背景に佇む赤い外套の男、そしてこのシンプル極まりないテキスト。
 ただキャラクターと、キャラクター名を表示するだけで、これほどの演出になるのかと胸を打たれた。彼の正体が明かされるこのシーンは、Fate全体を通じてももっともショッキング、かつノベルゲームというジャンルにおける快楽が凝縮されたものだった。

 しかしこのシーンを経たプレイヤーたちは、依然として彼をアーチャーと呼んでいた。正体が明かされてもなお、ほとんどの場合真名ではなくクラス名で呼び慣わし、しかもそれがもっともしっくり来てしまう。Fateのキャラクターたちは、この点がきわめて特異だったのではと思う。

 しかし時は移ろい、セイバーもアーチャーも固有の誰かを示すものではなくなった。
 彼女はアルトリアであり、彼はエミヤである。
 Fateワールドは原作者すら想像もつかないほど巨大に膨れ上がり、世界中にファンを持つほどの存在に成長した。その中で、キャラクターのあり方も否応なく変わっていった。
 彼をエミヤと呼ぶ人のほうが今や多数派なのだろう。オリジナル版がPCゲーム史上最大級のヒット作とはいえ、そのプレイヤー数は現在のFGOのそれとは比較にもならない。
 そしてかつて比較にならないほうのプレイヤーだった私は――今のFateワールドの盛り上がりに依然としてワクワクしながら、“アーチャー”ではなくなってしまった彼を思い、ほんの少しだけ切なくなるのである。

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