Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

ノベルゲームならではのトリック! 『黒白の夜』レビュー

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 今回のフリーノベルゲームレビューは、個人サークルUnreality(@eccentricyazuki)の『黒白の夜』です。何でもこれが記念すべき10作目だとか。

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 さて私がこの作品の何に惹かれたのかというと、正直に言います。やたらムチムチした女の子のキャラグラフィックです。
 しかしいざスタートしてみると、ノベルゲーム的に非常に興味深い展開が待ち受けているのでした。

──目覚めたらそこは、灰色の空に覆われた世界だった。

主人公のカオルは、少しおかしな特技を持っているだけの普通の男子高校生。そんな彼と三人の友達、そして二人の妹が、学校の屋上を模した謎の空間に閉じ込められてしまう。

そこから出る方法は、ゲームマスターの作ったミステリーノベルの犯人を特定する他ない。もしも犯人を間違えてしまえば、その先には死あるのみ。

果たして、カオル達は生き残ることができるのか!? 戦慄のデスゲームが今、幕を開ける!

 主人公たちが、彼ら自身をキャラクターに仕立てたミステリーノベルゲームを解き明かす。つまり二重構造を持つミステリーノベルゲームです。とはいえ選択肢なしの一本道なので、プレイヤーは純粋にストーリーだけを追うことができます。プレイ時間も数十分程度と短めです。
 そういう意味では難易度は低いのですが――このゲーム内ゲームは、スタート直後からすでに仕掛けられていた。そしてその仕掛けとは、まさにノベルゲームならではの巧みなものだったのです。

 

 ミステリーの真骨頂とはやはり、あっと驚かせるトリックです。謎が明かされたときに生み出される快感にこそ、このジャンルの存在意義があります。
 小説において磨き上げられ、数々のパターンを生み出してきたトリックは、やがてアドベンチャーゲームの手法としても流用されるようになります。たとえば国内初の本格社会派ミステリー『ポートピア連続殺人事件』などは「信頼できない語り手」という、一種の叙述トリックとして知られます。
 ミステリー小説の手法を用いることで、ミステリーアドベンチャーの世界は発展していったわけですが、やがてクリエイターたちは考えることになります。ゲームという媒体ならではのトリックを生み出せないかと。
 それに成功した作品のひとつが、たとえば以前も取り上げたことがある『Ever17』などです。

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 ノベル・アドベンチャーゲームはテキスト、グラフィック、サウンド、システムの総合エンタメです。とりわけグラフィックの比重は重く、同時にもっとも小説との差別化を図れる部分です。すなわちトリックの要素として活用しがいがあります。
『黒白の夜』の仕掛けも、まさにそうしたものでした。ミステリーで双子(反転)となれば、彼女たちに何かあるだろうという見当は容易に付いたのですが、そう来たかーと感心させられました。画面全体に視野を広げた、非常に目の付け所のいいトリックだったのです。

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 この決め台詞も、クスッと笑えるカッコよさで見事でした。ストーリー的にもキャラクター的にも、愛すべき佳作です。