ノベル・アドベンチャーゲームの歴史を考える上で、制作ツールの存在は非常に重要です。
以前の記事で、制作ツールの“元祖”として1986年の「アドベンチャー・ツクール」を挙げたことがありました。
これが掲載されているログイン1987年1月号はまだ入手できていないのですが、ライターでアドベンチャーゲーム研究家のなべやき/福山幸司さん(@fukuyaman)のツイートを引用させていただくと、なかなか興味深いことがわかります。
ツクールシリーズの原点『アドベンチャーツクール』が載ったときと同じ号の発言である pic.twitter.com/ld5lQJ1tBF
— なべやき⭕ (@fukuyaman) 2017年12月17日
「世界で一番簡単な」と銘打っていたのがミソですね。
私も最近知ったわけですが、実際には「アドベンチャー・ツクール」以前にも、アドベンチャーゲーム制作ツールというものは存在していました。なべやきさんによれば、海外では1980年からあり、日本でも1983年頃から登場していました。私もそれを示す資料を先日入手したのでご紹介します。
ログイン1983年10月号の「標準BASIC アドベンチャーゲーム開発ツール」です。アドベンチャーゲーム制作連載の第3回、その付録という位置づけになっています。みんなアドベンチャーゲーム作って楽しもうぜ! というムーブはこの頃からあったわけですね。
見てのとおりプログラムの羅列で、プログラムなんかまったくわからない、という人がトライしてみるには、ちょっと難しそうな印象です。しかも「個人で利用するほかは著作権者の断りなしに使用できません」と注意書きもあったりして、いろんな意味で現在言うところのツールとはだいぶ違います。
ただ「最低限ゲームっぽくなっているから、このテンプレートを参考にして自分なりのゲームを作ってみてね」という設計思想は何ら変わらないと言えるでしょう。
そして記事の最後はこう結ばれています。
アドベンチャーゲームで最も大変なゲームデザインに、とにかく専念してもらうために、プログラミングを簡略化してしまおう、というのが今回のツール開発の目的なのだ。
さあ、キミのオリジナルを作ろう! LOG INソフトウェア・グランプリが待っているぞ!
ちょうどこの号から、ログインソフトウェア・グランプリというコンテストの告知が始まっているのですが、このノリは現在のティラノゲームフェスなどとまったく変わりません。
今も昔も、アドベンチャーゲームは比較的簡単に作ることができ、だからこそパソコン黎明期からこうしたツールも生まれていたわけです。