Arai Koh's Create Life

シナリオライター&ゲームライター・アライコウのブログ。創作、新旧の商業・インディーノベルゲームなどについて書きます。

取引先のゲーム会社が破産した

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※この記事は2015年5月にnoteに書いたものです。noteを退会したため、こちらに転載することにしました。しかし今読んでも面白い(?)かと思います。

 

 いきなり裁判所から封書が来たら、あなたはどう反応するだろうか。

 100人に聞けば100人とも、ビックリするだろう。それだけ裁判所という言葉の響きには、尋常ならざるプレッシャーが秘められているものだ。いったい裁判所が私に何の用だ。何も悪いことはした覚えはないのだが。

 よくよく見たら宛名には「アライクリエイト」と印字されている。私の個人事務所名、いわゆる屋号というやつだ。つまりライターとしての私に送られた封書なのだった。そこでようやく、もしかしたら……と思い当たった。

 とりあえず封を開けてみると、こんなことが書かれていた。予想どおりだった。

〈下記債務者は、これまで皆様のご支援を賜りながら事業を継続して参りましたが――〉

 以前取引のあったゲーム会社の破産通知書だった。ひとまずM社としておこう。3年前、私はM社からシナリオ制作を依頼され、引き受けた。そのシナリオは問題なく納品され、あとは嬉しい原稿料の振り込みを待つだけである。

 実はこの仕事の前にもM社からシナリオ執筆を引き受けており、そのときは納品からさほど間を開けずに振り込みがあった。結構な金額だった。仕事の内容自体も楽しかった。モバイル向けのオーソドックスなギャルゲーだったのだが、今テレビアニメで大活躍の女性声優を起用して、私もスタジオでの収録現場に立ち会うことができた。あの有名な声優が、自分の前で演技をしている! こんな経験は初めてのことだったので、とにかくやりがいを感じていた。

 そんなわけで、私のM社に対する好感度は抜群だったのである。また一緒に仕事をさせてもらいたい、そんなことを思いながら、原稿料の支払いの日を待った。

 

 ところが、いつまで経っても振込みがない。

 

 ……いい仕事をさせてもらったのだから、まあ数ヶ月遅れるくらい我慢しよう。当初はそう思っていたのだが、1年経ってもなしのつぶて。このとき初めて、この会社やばいんじゃないか、と思った。実は前述の有名声優を起用したギャルゲーも、開発が上手くいかなかったようでお蔵入りになっていた。シナリオもグラフィックもボイスもできているのに、そういうことがありうるの? と疑問の方もおられるだろう。自分自身、とても信じられなかったが事実である。

 とにもかくにも、私はM社に再三の催促をした。が、そんなことで支払われるなら苦労はない。複雑な理由があったようだが、色よい返事はもらえなかった。こうなるとMAXだった好感度もゼロである。脅しめいたことはしたくなかったが、訴えを起こすと迫った。……手続きが面倒そうだから、実のところそんな行動を起こす気は50%くらいのものだったが、効果はあった。分割で支払うと約束し、覚書まで交わした。

 やがて第1回目の振り込みの日、ビジネス口座にしている楽天銀行から入金のメールがあった。見てみると、おお、M社からの振り込みではないか。ずいぶん時間がかかったが、これで原稿料は回収できそうだ。好感度が再び上昇するわけではなかったが、少なからず安心した。

 

 次の月も、約束どおり入金された。……たったの1,000円。

 

 私は何度目かわからない催促をしたが、あとはもうどうしようもなかった。連絡も途絶え、ついに私は原稿料の回収を諦めた。訴訟を起こす気力も起こらない。起こしたところで、おそらく無駄だったろう。それよりも目の前にある仕事に集中することにした。少し前からまた別のゲーム会社と組んでシナリオ執筆にいそしんでいたのだが、この会社は支払いが遅れたことはなく、毎度の打ち合わせも和気藹々として、ビジネスパートナーとして実にありがたい存在である。

 そして今年の3月末、冒頭の通知書が送られた。M社は破産し、私はM社に対する債権者となったわけだ。

 通知書にあった「皆様のご支援を賜りながら事業を継続して参りましたが」というのは、テンプレートの文面だとしても、真実なのだろう。社長さんは必死になって金策に走り、ゲーム開発を継続しようとし、しかし叶わなかった。いろいろ言いたいことはあるものの、そんな状態になった人をさらに追い詰めたところで何も変わらない。

 私にできることは、弁護士先生の言うとおりに「今後開始する破産手続きにご協力」することだ。破産債権届出書なるものを作成し、証拠書類とともに郵送した。

 6月、債権者集会というのが行われる。私と同じ立場の人が集まって……何をするのかまったくわからない。検索してみたところ、破産管財人の報告を聞くだけの、セレモニー程度の集まりになるらしい。加えて中小企業が破産した場合、債権者が集会に出席することはないらしい。理由は、どうせお金が返ってくる可能性はゼロに等しいから。なるほど、容易に想像できることだった。

 それでも私は、債権者集会に出ようと思う。何か思わぬことがあるかもしれないし、社長さんの謝罪の言葉くらい直接聞いておきたい。それにライターたる者、何事も経験である。裁判所に足を運ぶのは、確か小学校の社会見学以来だ。めったにできないこの経験を、少しでも何かの役に立てたいと思う。こうしてnoteに書けば、同業者の参考にもなるだろう。ご興味のある方は、続報をお待ちいただきたい。

 

 ところで破産と倒産、どう違うのかと疑問を持ったが、倒産は正式な法律用語ではないそうだ。そんなわけでタイトルにも倒産ではなく破産を使っている。

【続きの記事】破産したゲーム会社の債権者集会に行ってきた

社長失格

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