【前回の記事】「国」シリーズの最新作『ハルカの国』体験版が近日公開!
スタジオ・おま~じゅの最新作『ハルカの国』体験版、その名も明治越冬編が公開され、先日までじっくりとプレイしていました。
明治。
新政府に仕えながら、剣の腕を磨いていたユキカゼ。
そこに東北の狼、ハルカの噂が届く。
関東最強と謳われるハルカに、ユキカゼは修羅を燃やす。
「強いの私だ!」
嫉妬の炎に燻られることに耐えきれず、ついにユキカゼは遠征討伐へと旅立つ。
しかし、ハルカの住まう奥羽には冬がすぐそこまで迫っていた。
北国の圧倒的な冬の下。
尽きることのない風雪のなか描かれる、出会いの物語。
明治越冬編。
これまでのシリーズでちょくちょく登場していた賢狼ハルカ。彼女は明治の昔からどう生きていたのか、そして彼女が残した因果が現代までどのように繋がっていくのか。国シリーズの土台となる過去100年を描くとのことで、『雪子の国』以上の大作になるでしょう。
さて感想ですが、何と言っても語り部である主人公・ユキカゼのキャラクターが抜群にいい。気持ちいいほどの刀馬鹿です。
意気軒昂としてハルカの元に乗り込むも圧倒される一連の描写は、本体験版前半のハイライト。ユキカゼと対極的なハルカ、その存在感の大きさがこれでもかと凝縮されたシーンですが、かといってユキカゼの株が下がるわけでもなく。この真っ直ぐなキャラクターは何より主人公にふさわしいと言えます。
後半は奥深い森での越冬が、実に綿密に展開されます。何ものも抗えない凶暴な吹雪の中、ユキカゼは自分を見つめ直し、ハルカの本質を観察しようとする。厳しすぎる環境のはずが、これもユキカゼのキャラクターのおかげでしょう、どこか安心して読めます。
しかし終盤、たったのワンシーンですべてを持って行かれます。ああそうだ、私たちは現代ではなく明治を見つめているのだ――と誰もが再認識させられるでしょう。
また本作の注目すべき点は、性というものをほとんど感じないということです。
『みすずの国』では、ひとりの少女の健気さを。
『キリンの国』では、ふたりの少年の熱さと爽やかさを。
『雪子の国』では、少年と少女の情愛を。
明確に男性と女性を描いていたのですが、ユキカゼもハルカも化けということもあってか、非常に中性的なキャラクターです。
ハルカもユキカゼも可愛く描かなくていいから楽
— Kazuki (@misuzu5S) 2019年1月27日
ハルカは身体も大きくて、お尻もでーんと大きくて、体重も100キロ以上あります
作者さんがこのように語っているように、ユキカゼもハルカも決して可愛らしさを目指したデザインではありません。だからといって男勝りというのも違うでしょう。「ユキカゼ」「ハルカ」というそれぞれひとつの個体としか言いようがないのですね。
性をめぐる描写は、現代のもっとも重要な課題のひとつです。総合的メディアであるゲームは、むしろ率先してこの課題に向き合わねばなりません。これからのゲームは、シナリオもグラフィックもシステムも、性の多様性というものを無視することはできないでしょう。
『ハルカの国』はジェンダーレスな作風です。性に囚われない個性がそこにある。シナリオはファンタジーなのですが、キャラクターに関してはきわめて現代的と感じます。このふたりの化けが、性とは離れたところでどのような物語を紡ぐのか――完成が俄然楽しみになってきました。