Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

『送り犬』はサウンドノベルの源流を受け継いだ作品という話

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 本日7月12日から、Nintendo Switch版『送り犬』がダウンロード販売開始になりました。

 何度かこのブログで書いていますが、かつて配信されていたiアプリ版に私はサブシナリオライターとして参加しており、それが私のゲームシナリオライターデビュー作です。このSwitch版はiアプリ版がベースということなので、そのシナリオも収録されているのだと思います(Switchは所持していないので自分では確認していません)。

『送り犬』はテキストを読んでいき、随所に表れる選択肢を選んで進めていく、きわめてオーソドックスなタイプのノベルゲームです。しかしよく考えてみると、近年にはあまり見られないタイプの作品ではないかと思います。

 それは、ルートによっては基本的な設定までガラリと変わるということです。たとえばAというキャラクターが、あるルートでは人外の者だったのが、あるルートではごく普通の人間になっているというような。

 男性向けであれ女性向けであれ恋愛ゲームの場合、特定のキャラクターと結ばれるという大前提があるため、ルート毎にキャラクター設定を変更するような手法はまず使えません。
 また、作品全体を取り巻く謎を解明するといった、巨大な目的が設定されることも多くあります。特に美少女ゲームにおいては、2000年代に入って以降、シナリオのボリュームが肥大化し、ストーリー重視に傾倒していきます。鏡裕之氏は『AIR』がボリュームインフレーションの皮切りで、『Fate/stay night』がその流れを決定的にしたという旨の分析をしています。

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 各ルートを巡った末の最終ルートで、ついに真相が明かされる、一気に感動を呼び起こす――こうした作りのノベルゲームがスタンダードになったわけです。当然、基本設定を変える必要などどこにもありません。

 さて、選択肢によって設定ごと変わってしまう作品の代表は――ノベルゲームというジャンルに関心のある人にとっては聞くまでもないですが、『弟切草』と『かまいたちの夜』です。

弟切草 蘇生編

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  • アーティスト: ゲーム・ミュージック
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かまいたちの夜 サウンドトラック

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 前者は謎の洋館、後者は吹雪の山荘。これを舞台としていれば、あとはどうにでもストーリーを展開できるという特色がありました。恋愛要素を強く主張せず、セカイの謎なんて大仰なものもないからこそ、可能な手法でした。
 そして『学校であった怖い話』が世に出ます。語り部を選ぶ順番や選択肢によって千変万化するストーリーとキャラクター設定。小さな物語を幾重にも束ねて一種のカオスを作り上げています。このタイプのノベルゲームの究極系といっても差し支えないでしょう。

『送り犬』もそうした、古き良きサウンドノベルの源流を汲む作品と言えます。
 ノベルゲームとしては比較的小規模ですが、そのことを生かした自由自在な展開で楽しむことができるのです。プレイヤーそれぞれの好みは当然あるにせよ、こうした作品もノベルゲームのひとつの形なのだと感じ取っていただければ、シナリオの末席に加わった者として幸いです。