Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

滅びの美学を描いた『幕末尽忠報国烈士伝 MIBURO』のコンセプト

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※ネタバレを含みますので、未プレイの方はご注意ください。

 

 年末はインレ(18禁)の『幕末尽忠報国烈士伝 MIBURO』(以下MIBURO)をひたすらプレイしていました。以前に書きましたが、私はインレの前身である同人サークルれいんどっぐ時代からのファンです。もう商業の美少女ゲームを買うことはほとんどないのですが、これだけは買うと決めていました。

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 忠臣蔵を題材にしたデビュー作『ChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-』(以下ChuSingura46+1)は今も売れているロングセラーで、多くのファンを獲得。新撰組を題材にした今作にも大きな期待が寄せられていました。
 私はまったく歴史に疎く、新撰組のこともほとんど知りませんでした。知っていたのはメンバーに近藤勇、土方歳三、斉藤一、沖田総司がいる、くらいのものです。斉藤一はどうしても牙突とか悪即斬のイメージが強いのですが……。

 同じように新撰組をほとんど知らなかった人には、好評をもって迎え入れられたようです。タイトルにもあるように、忠義を尽くし国に報いようとする烈士たちの物語。一介の浪人にすぎなかった主人公たちが、幕末の世に恐れられる人斬り集団になり、しかし巨大な時代の流れに翻弄され最後には徳川幕府と共に終焉を迎える――最後のサムライたちの滅びの美学を堪能できました。昔から日本人を虜にしてきた一大歴史ドラマを、美少女ゲームとしてとっつきやすい形で再生したインレの仕事は、大いに評価されるべきものでしょう。

 では新撰組をある程度知っていた人には? 厳しめの評価も少なくないようです。
 本作はまったく史実どおりに進行します。徳川が逆転大勝利とか新撰組メンバーたちがみんな生き残るなんてifはありません。近藤が影武者を立てて生き残ったり、沖田が病死ではなく戦って死ぬとかの個別ルートはありますが、大枠は変わりません。前作『ChuSingura46+1』と比べると、そのあたりのゲームならではの遊び心、自由さが欠けていたのでは? という声です。私も一理あるな、と思います。

インレ『幕末尽忠報国烈士伝 MIBURO』個別で一番好きなルートはイサリンでした。

 しかし私はこの構成は、コンセプトの問題だと解釈しています。

 結末のわかりきった、史実をなぞったシナリオでは、あえてゲーム化する意味はあるのか。シナリオライター葉山こよーてさんは、きっと自問自答したはずです。しかし新撰組のありのままの生き様というものを、まだ知らない人に知ってもらいたい。第一にそのコンセプトがあり、それを貫き通したのだと思います。実際、みんなが幸せになるようなエンドがあるよりも、隊士たちの生と死がより鮮明に描かれたと感じました。

『ChuSingura46+1』は、現代人の主人公がループを繰り返した末に、赤穂浪士は全員死んだことにして、ある島で人知れず生き続けるというラストでした。しかし一度使ったネタをもう一度、というわけにはいきません。それこそ手抜きの誹りを免れないでしょう。だから今作では、批判を承知の上で史実そのままを描くという道を選んだ。滅びの美学を損なわないためにも。

 どう見ても続き(ファンディスク)が示唆されている終わり方なので、この評価も暫定的なものになってしまうのですが、細かい部分は抜きにしてひとまず私は満足だったということです。今年中には何らかの続報があるかな、と期待しております。