Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

フリーゲームユーザーのための『Doki Doki Literature Club!』プレイガイド&ネタバレなしレビュー

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※致命的なネタバレはありません

海外発、驚異的ヒットのビジュアルノベル

『Doki Doki Literature Club!』(以下DDLC)をご存じでしょうか。

ddlc.moe

 海外のゲームクリエイターDan Salvato氏によるアドベンチャーゲームで、昨年に無料でリリースされるや、爆発的な人気を博しました。世界最大級のゲーム・エンタメ情報サイトIGNが主催する「IGN's Best of 2017」という賞では、以下のように複数もの部門にノミネートされました。

 コアなファンはいるものの、決してメジャーにはなれないジャンル。それが海外におけるビジュアルノベルのポジションなのですが(まあ日本と同じですね)、その中にあってDDLCの高評価は、まさに異例中の異例です。

 無料にもかかわらずグラフィックやサウンドなどがハイクオリティだから評価が高い――日本のフリーノベルゲームでもしばしば見られた現象ですが、DDLCにかぎっては、そんな単純な話ではありません。

 まさにMost Innovative(もっとも革新的)。

 誰もが驚かされるほどの挑戦的なシステムによって為し得た高評価なのです。
 そして私も遅ればせながら、つい先日にオールコンプしました。本作は有志による日本語パッチ(非公式)が公開されており、日本のプレイヤーも多いのです。ぜひオールコンプしてから検索してみてほしいのですが、大絶賛の嵐であることがわかるでしょう。

 

 さて、国内のフリーゲームユーザーは、普段はベクターふりーむ夢現といったフリーゲームのライブラリ・情報サイトを中心に見ていると思います。
 そういった人たちは、DDLCをあまりプレイしてはいないのではないかと思いました。アンテナに引っかかりにくいでしょうし、そもそも海外のゲームです。入手は公式サイトの他、海外の大手ストアSteamで行えるのですが、基本的に有料作品の場であるSteamを普段から利用しているフリーゲームユーザーは、そう多くはないはずです。だからどこかでDDLCの名前を見かけたとしても、なんとなく食指が動かなかったのではないでしょうか。


 もったいないです。あまりにも。
 ノベルゲームが好きなら、ぜひともプレイすべきです。今すぐに。


 前述のとおり日本語パッチが公開されていますので、英語がまったくわからなくても問題なくプレイできます。パッチはSteamのコミュニティで配布されているので、まずはSteamのアカウントを登録してください。言語は日本語が使えるのでご安心を。そうしたらコミュニティでパッチを入手し、説明の通りに適用しましょう。

Steam Community :: Guide :: Doki Doki Literature Club v1.1.0 非公式日本語化パッチ (18/03/14 更新)

 これで準備は完了です。ようこそドキドキ文芸部へ!

驚愕すべき仕掛けの数々

 ゲームを起動すると、まずこのメッセージが表示されます。

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 ああ、何かよからぬ仕掛けや演出があるんだな。グロとかスプラッター描写とか? プレイヤーは最初にそんな風に想像します。
 平穏なギャルゲ的日常が一転して恐怖へ――という構成、インディーノベルゲームにおいてもっとも有名なのは『ひぐらしのなく頃に』でしょう(無料公開の第1話だけプレイした人も多いはずです)。じわじわと忍び寄る不穏な影、そして突如豹変するヒロイン。あの戦慄は今もなお色褪せません。日常からの落差は、あればあるほどにプレイヤーに衝撃を与えます。
 
 冒頭ではわざわざ注意書きページのURLも表示して「これはホラーです」と教えてくれるのですが、こう疑問に思った方もいるかもしれません。
 どうしてわざわざこんなことを書いたのだろう? 何も伝えなければ、さらにプレイヤーを驚かせることができるだろうに?

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 実際のところは「萌えギャルゲーだと思ったのにこんなものプレイさせやがって!」なんていう苦情を未然に避けるために予防線を張ったのでしょう。もちろん本当に精神的に弱い人へ害が及ばないようにという配慮もあるはずです。
 しかし、このゲームには強い刺激があると事前に教えたところで、まったくゲームの真価を損なうことはなかったのです。

 なぜなら、強い刺激なんてものではありませんでした。

 これ以上はすべてネタバレになってしまうので書けないのですが……ひとつだけ書けることがあるとしたら、それは「現実に侵食するような恐怖」です。従来のホラーゲームとは一線を画すその仕掛けの数々は、「現実のプレイヤーへの攻撃」と言っても差し支えがないほどの威力を持っていました。
 こういった要素を取り入れた作品は本作が世界初ではないにしろ、多くのプレイヤーにとってはファーストインパクトだったのでしょう。Steamの「圧倒的に好評(95,000以上のレビューが投稿され、95%以上のおすすめ)」がそれを物語っています。

 

 正直な話、これほどのビジュアルノベルが海の向こうで誕生したことは心から喜ばしいと思うと同時に、悔しさもあります。
 これは私がクリエイターだからであって、ユーザーの方々は何も気にする必要はないのですが、本当に今の海外ビジュアルノベルのレベルは高くなっています。特にシステムの凝りようはすでに日本を上回っているとも思えます。

 以前、海外製ビジュアルノベルについての勉強会に足を運んだのですが、今後はビジュアルノベルにおいてもギミックが重要視されるだろうという話がありました。
 単にいいストーリーというだけでは、パンチが弱いという時代になりつつあります。
 そしてDDLCは、きわめて効果的なギミックを用いたビジュアルノベルとして、ひとつのメルクマールとして記憶されることでしょう。

 日本のクリエイター、負けてはいられませんよ。