Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

創意工夫と衝撃の結末。ファンタジーアドベンチャー『Spyral-tryaL』レビュー

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 昨年、冬コミに合わせて体験版レビューをしたサークルOperation:Noveltyの『Spyral-tryaL』。遅ればせながら先日クリアしたので、レビューをお届けします。

www.araicreate-blog.com

 体験版はとても続きが気になる終わり方だったのですが、体験版ではまったく登場しなかったもうひとりの主人公、エレナ・ブロッサムが出てきて、彼女の視点のシナリオが始まってから本格的に面白くなりました。
 大切な人を救うため、がむしゃらにもがくリンド、そしてエレナ。その行動と思考はどうにも危なっかしく、ところどころ穴があり――率直に言えばシナリオのテクニック上の問題でしょうが、何と言っても目的が一貫していてわかりやすいのでテンポよく読めました。

「グラフィックやサウンド、UI(ユーザーインターフェイス)といった総合的なクオリティでは、経験豊富なサークルには及ばないかもしれません」と体験版レビューでは書いたのですが、その感想はオールクリアしたあとも変わりません。
 しかし本作には、それを補う創意工夫が随所に見られました。たとえばこのCG。

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 印象的なシーンで一枚絵を使うというのは、ノベルゲームにおけるもっとも基本的な画像演出ですが、これにはゾクッとしました。具体的にどんなシーンなのかは伏せますが、いかにも不穏な空気が流れているのがわかるはずです。
 百の言葉を費やすよりも、たった一枚のCGで雄弁に語ることができる。これはまさにその例でした。

 そして衝撃を受けたのが、ラストシーン。
「え、これしかエンディングがないのか?」
 と驚かされました。商業作品では絶対にこんな終わり方は許されないだろうというラストだったのです。
 しかし私はここに、作者はコンセプトを貫き通したのだと感じることができました。

受験コンプが甘々イベントや何重にも巡らされたトライアルをくぐり抜けていく内に見つける変えられないもの、かけがえのないものの選択、真実を追い求める代償は真実と向き合うことでしか償うことができない疑惑と魅惑と困惑と思惑とがスパイラルして絡み合うリアリスティックなファンタジー系ADV

 これは公式サイトにも明記されている、ジャンル名とするにはやたら長いPR文です。大事なのは後半部分。
 償い。それこそが本作の真なるコンセプトだったのだなと、ほとんど余韻のないあのラストシーンを見て思いました。こうすることでしか、この物語は、このキャラクターは終われなかったのだと。

 このラストシーンをもって、本作は同人らしさが存分に発揮されたといって過言ではありません。サークルデビュー作としては十分でしょう。すでに次回作も開発中とのことで、楽しみにしています。

Spyral-tryaL