Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

なろう小説読者必見、ファンタジーノベルゲーム『DAGGER』レビュー

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 今回のレビューは以前noteに掲載したものですが、当時のまま転載しました。現在との差違については後述します。

 


 先日、ライトノベル作家の新木伸さんが「3行企画書」についてツイートしていた。

 このツイートの言わんとすることは「優れた作品はたった3行でその素晴らしさを説明できるはず」ということだ。まったくそのとおりであり、すべてのクリエイターは自分の作品を3行で簡潔に説明できるようになるべきだろう。

 ここで私は、おやっと思った。まさしくたった3行でコンセプトを充分に説明している作品を、たった今プレイしているではないか。

www.doujin-creator.com

『DAGGER』シリーズは、同人サークルThe sense of sightによってリリースされているファンタジーノベルゲームだ。シリーズの紹介ページに「あらすじをざっくり三行で!」とあるので見てみよう。これがまさに優れた企画書の最初の3行といった趣きなのである。

  1. 主人公が奴隷として売り出される少女を助けます
  2. 心を閉ざした少女が、時間をかけてだんだんデレます
  3. 剣と魔法の戦闘ありですが、ファンタジーで優しい物語です

 どういう物語なのか、一目瞭然だ。主人公はきっと強くて、ヒロインは庇護欲をそそられる可愛さで、バトルと人間ドラマが満載なのだろう――。少なくともこの3行から判断するかぎり、面白くないわけがない。そして実際プレイしてみるとそのとおりだったのだ。

 前大戦において常人離れした戦いを見せたことから「戦場の最前点」と呼ばれる主人公のティストが、孤独な少女アイシスと出会ったことから始まるストーリー。何と言ってもオープニングが素晴らしい。「1. 主人公が奴隷として売り出される少女を助けます」を、開始1分で展開させている。これで主人公とヒロインの関係を8割方描写しており、作者の構成力の確かさを感じ取ることができた。テキストも非常に読みやすく、するすると読み進めることができる。テキストの上手いノベルゲームは、それだけで快感というものだ。

 人間、精霊族、魔族に三分された世界で繰り広げられるのは、どこまでも王道をゆくファンタジーだ。美少女たち(アイシス以外にもいっぱいいる)との日々を軸に、いけ好かない貴族との確執、種族間を越えた絆、強大な敵との戦いが描かれていく。メイン、サブを合わせてキャラクターは総勢20名以上に及ぶが、誰もがよく描き分けられていて、ストーリーの昇華に寄与している。

 中でも抜群のキャラクターは、他ならぬティストだろう。強くてモテモテ、思慮分別があり、さらには異名が「戦場の最前点」。昨今人気のなろう小説の読者であれば、きっと気に入るのではないか。と思っていたら、なろうにずばり小説版があった。イラストとサウンドがなくてもよければ、無料のこちらを読むのがいいかもしれない。

 多少の欠点もある。バトルシーンは数枚のイベントCGのほかは、ほとんどテキストと立ち絵、効果音だけで描写され、演出面はいささか物足りない。そして私はこのシリーズをAndroid版でプレイしたが、最初にリリースされたPC版をそのまま移植しているため、ユーザビリティやデザインがスマホに最適化されているとはいえない(お手軽にスマホ移植を実現しているツールは、もちろん素晴らしいと思っている)。

 とはいえ、これらは些細なことだ。ノベルゲームに大切なのは、何よりもストーリーと文章力。良質な王道ファンタジーを読みたい人には、これ以上最適な作品もないと自信を持って言える。シリーズは現在3つの本編と2つの短編がリリースされている。Android版なら全部合わせても約1,000円。それでいてプレイ時間は30時間以上というコスパのよさ。同じノベルゲームクリエイターとしてはちょっとした脅威だが、このシリーズがもっと多くの人に知られることを願っている。


 

 というレビューでした。あれから本作は大幅にアップデートしています。

 まず各話バラバラに購入しなければならなかったのが、課金型になって1本化されました。旧版を購入した人は、それがインストールされていれば再度課金せずともプレイできるという親切仕様です。
 そしてシステムも改善されています。パソコン版からの移植そのままだったシステムがスマホに最適化されており、グッとユーザビリティが上昇しています。

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 改修には15万円かかったとのことですが、ペイするのは結構難しいと思います(経験者は語る)。それでもユーザーを第一に考えるこの姿勢は、素晴らしいの一言。少しでも多く売れればよいなと思い、レビューを再掲した次第でした。

f:id:araicreate:20180430114637p:plainアイシスかわいい。