Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

シネマチックな映像演出が光る!伝奇活劇ノベル『マイスターと時攫い破』

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 冬コミまで1週間を切りました。同人ノベルゲーム界隈を応援する意味でも、できれば毎日体験版レビューをしていきたいと思います。今回はサークルSPIRITED-ZEROの『マイスターと時攫い破』。破とあるとおり、第1作目の序に続く最新作です。しかし物語の時系列的には過去にあたり、前作を未プレイでも問題ありません。

平穏を捨て護衛としての人生を選んだ少年、東雲永冷(しののめながれ)。
彼の仕える大社――明道寺(みょうどうじ)は危機の中にあった。

 

三年前、神主の夫人である祈(いのり)が暗殺された。
明道寺を狙う存在が露呈したその凄惨な事件を機に、
『護衛団』と『衛士隊』という二つの組織が結成される。
明道寺の一人娘であり、幼い頃を共に過ごした久遠(くおん)は、
身を守るため屋敷で幽閉同然の生活を余儀なくされた。
彼女を求めるように組織に属してから、二年余が過ぎていた。

 

永冷を気に入り厳しく鍛える護衛団の長、帝(みかど)。
衛士隊を率いながらも横顔に儚さを秘めた少女、環(たまき)。
かつて共に学舎で過ごし永冷の秘密を知った、雫(しずく)。
同じ過去を持つ故に惹かれ合うことが定められた、栞(しおり)。
透明だった少年に初めて生きる道を与えた、久遠。

 

緩やかな停滞の中で萌芽する、新たな不穏。
永冷と五人の、出会いと衝突、恋とたたかい。
いずれ全てを喰らい尽くすであろう、冥闇(くらやみ)の怪物。

 

秋から冬へ、季節が移り変わる数ヶ月。
鬼と呼ばれた少女と、鬼に魅せられた少年の行く末。

 

マイスターと時攫い――その物語は原点へ。

 ジャンルは伝奇活劇です。戦うと決意した主人公の少年と華麗なる戦闘美少女たち――まさにオーソドックスな同人伝奇活劇のフォーマットで、このジャンルが好きな人は安心して物語に入ることができるでしょう。

 ストーリーは三人称の抑制された筆致もあって、全体的に静かです。明道寺での過酷な訓練、ヒロインたちとの時に苛烈な、時に情感的な触れ合い、そういった日常が綿密に描写されます。
 そしてその描写を、非常にハイレベルの映像演出が支えます。単に背景+立ち絵というのではなく、シネマチックと謳うとおりズーム、スクロール、遠近法などのテクニック、さらにノベルゲームの伝統であるシルエットを駆使し、とにかく贅沢な演出。開発はすでに数年に及んでいるようですが、グラフィック素材も大量に必要だし、これは時間かかるわと納得しました。

 ツールは吉里吉里Zが使われています。非常に快適であるばかりでなく、Twitter認証することにより、現在の画面をTwitterに投稿できる実況機能があります。これは非常に素晴らしい。こういうシステムが同人ゲームでもスタンダードになればいいなと思いました。

 この体験版はキャラクター、主人公を取り巻く環境、世界観の紹介に留まっています。事件らしい事件が起きないので、いささか盛り上がりに欠けるかなとは思いましたが、このハイレベルな演出でどんなダイナミックなストーリーが展開するのか……完成はまだまだ先だと思いますが、期待したいところです。コミケに行かれる方は前作の序が少数頒布予定とのことなので、狙ってみてはどうでしょうか。