Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

今こそ再評価すべき! スタジオディーン版『Fate/stay night』7つの見どころ

 もうすぐ劇場版『Fate/stay night[Heaven's Feel]』が公開されますね。私は立川シネマシティの会員ですが、極上爆音上映でやってくれるとは嬉しいかぎり。

 さて、FGOからFateにハマったという人がだいぶいると思います。原作の第二ルートである『Unlimited Blade Works』や前日譚の『Fate/Zero』もFGOリリース前の放映ですから、見たことがない人は少なくなさそうです。現在放映中の『Fate/Apocrypha』は原作とは違う平行世界の話なので、Fate世界の入門としてはちょっとオススメしがたい。

 2004年のパソコン版からの原作ファンとしては、新規ファンのみなさんにはやはり基本のキから楽しんでもらいたい。スマホアプリではセイバールートが無料プレイできますが、ノベルゲームをがっつりプレイするのは難しいという人もいそうです(うちの機種じゃ動かねえ!とかもありますし)。そこでオススメするのが、2006年に放映された初のアニメ版。

 制作会社はスタジオディーン。1970年代から活動している老舗スタジオで、数々のアニメを手がけてきました。
 ディーン版は原作の第一ルート、すなわちセイバールートを根幹として、多少のオリジナル展開を交えて構成されています。他のアニメ版と同じく2クールで、ボリューム面に関しても充分。
 しかしこのディーン版、近年はどうも影が薄くなっている印象です。放映から10年以上経っているからというのも理由のひとつでしょうが、一番の理由は『Unlimited Blade Works』『Heaven's Feel』『Fate/Zero』を制作したUfotableの映像美が圧倒的なためでしょう。実際、ちょっとレベルが違うことは確か。ファンがそれらと比較してしまうのは無理からぬことです。

 しかし、アニメの本質は映像美ではない。

 ディーン版はシナリオ、演出、音響、あらゆる面で充分高いレベルにありました。もちろん映像に関しても当時の他のアニメと比べて見劣りするということはなかったはずです。
 今こそ再評価すべき! というわけでディーン版7つの見どころをご紹介しましょう。

1. 武内崇奈須きのこの両氏が全面参画

 念願のアニメ化ということで、原作サイドの力の入れ具合は並大抵のものではありませんでした。
 ゲームがアニメ化するとビジュアルが「なんか違う……」ということも珍しくありませんが、武内崇さんがキャラクターデザインを監修しています。おかげでファンにも大きな不満のない作画になりました。Ufotableに比べると、少し柔らかい感じですね。
 そして奈須きのこさんは構成原案としてプロット段階から関わっています。原作とは少し異なる新たなセイバールートは、一本のアニメとして理想的な形になっていました。
 両氏のアニメへの参画はその後のシリーズでも見られますが、ファンにとっては何よりの安心材料となっています。

2. 歌が素晴らしい

 オープニングテーマはタイナカサチdisillusion』。元は原作ゲームの主題歌でしたが、アレンジされての起用となりました。
 これが本当に素晴らしい。静かで美しいイントロからサビに至るまでの盛り上がりは、タイナカさんの伸びやかな歌声も相まって、聞くたびにゾクッとします。アニメーションとも非常にマッチしていて、切嗣の後ろ姿が映るカットが最高。
 もちろん他の歌も素晴らしい。第14話(詳しくは後述)限定のエンディングテーマ『ヒカリ』がとにかく泣けます。
 率直に言うと、歌曲に関してはディーン版が一番だと思っています。

ricordanza - Fate/stay night TV song collection -

ricordanza - Fate/stay night TV song collection -

 

3. セイバーの声が初々しい

 セイバーといえば川澄綾子さん。孫悟空の声優が野沢雅子さんってくらい、もうこの人以外は考えられませんね。武内さんたっての願いでキャスティングされたそうです。
 今やすっかり聞き慣れている川澄セイバーですが、初のアニメ化ということもあり、今よりほんのちょっとですが、初々しくて可愛い感じです。そんな貴重な演技を堪能できるのはディーン版だけ。

4. 劇伴は大御所・川井憲次

 劇伴を担当したのは川井憲次さん。アニメ、ドラマ、映画、ゲーム、あらゆるジャンルのサウンドトラックを手がけてきた大御所です。
 この劇伴に関しては非常に評判がよく「ディーン版は音楽はよかった」なんていう意見もよく見られます。いやそれだけじゃないと強く主張したいところですが。
 予告等で流れる『運命の夜』が一番印象的ですね。『約束された勝利の剣』『エミヤ』のアレンジもバッチリあります。

TVアニメ「Fate/stay night A. OST」

TVアニメ「Fate/stay night A. OST」

 

5. アニメオリジナルで描かれたアーチャーVSバーサーカー

 第14話「理想の果て」のアーチャーVSバーサーカーは今でもファンの間で語り草になっており、おそらくはディーン版最大の名シーン。原作においてはアーチャーの敗北という結果がテキストで描写されたのみですが、たっぷりと尺を使って白熱のバトルが繰り広げられます。奈須きのこさんの心の中に、このバトルを見せたいという思いがずっとあったのでしょう。
 圧倒的なバーサーカーの力、傷つきながらも決死の反撃をするアーチャー、得体の知れない相手に戸惑うイリヤ。そして展開される無限の剣製。BGMはもちろん『エミヤ』。すべての流れが美しい。
 そして第14話は特別なエンディングになっていて、アーチャー自身の回想のような構成になっています。アーチャーの正体についてはほのめかす程度に終わりましたが、ピンときた人が当時どれほどいたのかは、気になるところです。

6. ボンテージ桜

 原作のセイバールートでは桜は中盤以降ほとんど関わらないのですが、ディーン版においては見せ場が与えられました。もちろん視聴者は誰も予想していませんでした。ましてボンテージ姿になるなど……。
 ボンテージってなんぞと思われるでしょうが、未視聴の方のために詳細は伏せます。もちろんこれにも武内・奈須の両氏はしっかり関わってます。スタッフの暴走ではありません。
 さすがに賛否両論ではありましたが、とにかくボンテージ姿の桜が見られるのはディーン版だけ。あ、でもフィギュアにもなったそうで。

7. 映画並の壮大なエンディング

 通常、アニメのエンディングテロップは声優のあとに各スタッフという流れですが、最終話はそれまでに関わったすべてのスタッフを、五十音順で流すという異例の形を取りました。
 また第14話同様に専用のエンディングテーマが用意されました。『君との明日』――士郎とセイバーの心情をこれ以上なく歌い上げた名曲です。
 これらにより、アニメというよりは一篇の壮大な映画を見たような気分にさせられます。

 

 以上、7つの見どころでした。この記事を書くにあたりあらためて見直しましたが、今見ても充分面白かった。
 何より予備知識なくHeaven's Feelを見ても、ほとんどよくわからないことが予想されます。原作未プレイの方は、予習の意味でもぜひこのディーン版を視聴してみてください。