Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

同人ing! 同人ゲームクリエイターかくあるべし

 この数年、同人ノベル・アドベンチャーゲームの新規開拓があまりできていません。だからこそ懐かしの作品をメインに記事を書いてきたわけですが、正直もうネタ切れであります。
 今後は新しめの作品も積極的に取り上げたいと思いますが、ペースはゆっくりめになりそう。今回はその中でもイチオシのこちら。

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 サークル星団ファミリーが2012年にリリースした『同人ing ~Let's make the doujin game~』(連作形式だったので、初出はもっと前ですが)。近頃はライトノベル執筆をテーマにしたライトノベルがちらほら見受けられますが、同人ゲーム制作をテーマにした同人ゲームもあって不思議ではありません。本作はまさにそうした作品です。

 小説の新人賞で一次選考落選し、打ちひしがれていた赤名康平。どう修正してもよくならない原稿を図書室のゴミ箱に捨てたのだが、それをクラスメイトの小湊伊織が拾う。そして彼女は「一緒に同人ゲームを作りませんか?」と彼を誘う……。

 こんなうらやましいサークル結成があるかい! と現実をよく知る我らは思わずにいられませんが、それはさておき、ただのんびり同人ゲームを作ろうという話ではないのが第一のポイントです。135万円を稼ぐという、やけに具体的な目標が掲げられています。同人誌であれ同人ゲームであれ、お金にはこだわらないのが普通。だからこそこの物語設定は、常道からいい感じに逸れてグッドですね。
 彼らの日常風景は適度にコメディを交えていて、これまたクスリと笑わせてくれます。「シリアスとコメディのバランスが大事」というセリフがありますが、この作品自体がきちんとそうなっています。

 やがて迎える初の同人誌即売会。結果はそう都合のいいようには行かず、惨敗。そこからまた救いのある展開が待っているのですが、ここでは伏せます。

「売れない作品はゴミなのか? いいや違う!」

 主人公・康平の叫びでもあるし、作者さんの主張でもあるでしょう。書きたいことを書けばいい――それが同人だということは誰もがわかっているのですが、本作のシナリオはそれを見事にエンターテインメントに昇華させています。

 さて、ここまでがフリー配布されている体験版の内容。ここからさらに、指数関数的に面白くなっていきます。主人公の成長はもちろん、ヒロインとのドラマ。そして核にあるのは、それぞれのクリエイターの信念です。実際に同人ゲームサークルをやっている人も、そうでない人も、彼らのありのままの姿に感動すること間違いありません。

 そんなわけで、ここ数年でもっとも面白い同人ノベルゲームのひとつと確信しているのですが、欠点もあります。それは現在入手手段がないということ……。私がこの完成版を入手できたのも、たまたま去年、公式で期間限定の通販をやっていたからなんですね。いつの日か、またやってくれることを期待するしかなさそうです。ダウンロードサイトで販売してくれれば、いちばんありがたいのですが。