Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

水仙の花言葉は? 空虚な現代人を描いた大ヒットフリーAVG

 フリーゲームからはじまり、ノベライズ、コミカライズ、コンシューマー化など次々と商業展開を果たす……クリエイターにとっては夢のような話ですが、こちらはその代表的な例でしょう。

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 個人サークルステージ☆ななからリリースされた『ナルキッソス』。
 作者はシナリオライター片岡とも氏で、バリバリのプロが同人アドベンチャーゲームを作る……コミケで頒布されるような有料作品ならまだしも、フリー作品でというのは、当時も今もあまり例がないかと思います。そういう意味でも、本作の登場は衝撃的でした。
 2005年に1がリリースされると、そのクオリティで瞬く間に反響を呼びました。そして2、3と続編が作られ、有志により英語版や中国語版が作られ、数々の商業展開をも成し遂げるのです。上の写真は1と2が一枚になったゲームCDと、オリジナルサウンドトラックの2枚組セットです。全体的にハイクオリティでしたが、特に音楽の力が優れていたように思いますね。

ナルキッソス ~もしも明日があるなら~ Portable(通常版)

ナルキッソス ~もしも明日があるなら~ Portable(通常版)

 
ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)

 
ナルキッソス 1 (MFコミックス アライブシリーズ)

ナルキッソス 1 (MFコミックス アライブシリーズ)

 

 もちろんストーリーも、多くのプレイヤーを引きつける力を持っていました。
 主人公とヒロインは共に死の病を患い、流されるままに長期入院を送っている若者。病院で死ぬ気はないというヒロイン「セツミ」の願いを受け、ふたりは車で旅に出ることに……。しかしこれが、プレイヤーを感動させようという類のものではまったくないんですね。キャラクターにもテキストにも空虚が充満しています。自分の病に対してまるで他人事のように向き合っていて、感情が噴出しません。徹底的に乾いていて、人間としての温度や湿度がほとんど感じられないのです。
 自己の存在もおぼつかない空虚な現代人を、最大限に具現化している……私は当時、そんな印象を抱きました。何よりエンディングが悲痛きわまりない。手垢にまみれた表現ですが、「何かを考えさせられる」作品だったのです。

 フリーアドベンチャーゲーム最大のヒット作のひとつといっても差し支えはないでしょう。もちろん今でも無料でダウンロードできます。まだプレイしたことがないという人は、ぜひとも。