Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

虚淵玄が唯一作った同人ノベルゲーム

 オークションで高いお金を払ってでも手に入れたい……そう思い、実際に実行した唯一の同人ノベルゲームがこちらです。確か8,000円くらいで競り落としましたかね。

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 2003年、サークルEERGEDがリリースした『浄火の紋章』。帯のキャッチコピーにはこうあります。

「男絵ばかりモテるエロゲ原画師と戦闘ばかりウケるエロゲ脚本家がいま熱き想いをガン=カタに託す!」

 そう、ニトロプラス中央東口氏(現在フリー)と虚淵玄氏です。『鬼哭街』『斬魔大聖デモンベイン』などで、異色のアダルトゲームメーカーとして台頭していた頃ですね。そんな熱きふたりが出会ったのがSFアクション映画『リベリオン』。そして「ガン=カタ」という架空の戦闘術でした。

リベリオン-反逆者- [Blu-ray]
 

 全人類の平和のためにすべての人間が感情の抑制を義務化されている、荒廃的な世界。主人公ベルナードは特殊戦闘団グラマトン・クラリックの一員として、感情抑制を拒む反乱者を処刑する任務を負っている。彼らの操る戦闘術はガン=カタと呼ばれていた――と、あらすじは簡潔にして明瞭です。
 ガン=カタがどんな戦闘術かは、Wikipediaを見てもらえばいいでしょう。ああ、いかにもウロブチが好きそうだなという感じです。

 個性に優れた書き手の文章はしばしば「○○節」と称されますが、本作にも虚淵節が満載です。銃器名やその機能を散りばめ、登場人物をクールに躍動させています。序盤から展開される相棒ティレリとの反乱者殲滅作戦は、その圧倒的筆力を土台として息を飲む美しさを提供しています。
 作戦終了間際、感情抑制されているはずのティレリが笑いを浮かべているのをベルナードは見てしまい、物語に一気に危険な香りが流れ込みます。不審を抱くベルナードは間もなくティレリに囚われ監禁されるのですが、このときの狼狽、混乱ぶりが印象的でした。そしてティレリの真の目的とは……。それを知った途端、読んでいるこちらも男としての熱い血がこみ上げてきました。

 熱い戦闘だけでなく、人の心の脆さも見事に描写しています。プレイ時間1時間程度の短編ですが、濃厚なシナリオでした。虚淵氏のファンならば高い出費を覚悟してでも入手する価値はあるでしょう。