Arai Koh's Create Life

シナリオライター・アライコウのブログ。創作、新旧のインディーゲームなどについて書きます。

白か黒か。その選択の果てに貴方は殉愛を知る

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 圧倒的物語力。それがこの『灰瞳に機す』という作品を端的に言い表す言葉だと、私は考えています。

 殉愛ビジュアルノベルというジャンル名が示すように、その愛にいかに殉じるかという選択を突きつけられた少年の、あまりに悲壮な物語。白か黒か、たったひとつの選択肢がシナリオに素晴らしい深みを与え、プレイヤーを魅惑していきます。

 コメディに力を入れるあまり、序盤が少しばかり冗長であることは正直にお伝えしなければなりません。グラフィックも上手いと呼べるものではないでしょう。しかし、これと似たような評価を受けている同人作品をご存じでしょうか。そう、かの『ひぐらしのなく頃に』です。フリーで公開されている第一話は、仲間たちとの日常を描いた序盤がちょっと長々しく、辛めの評価をする人が少なくありません。キャラグラフィックで敬遠する人もいました。しかしそのマイナス面を吹っ飛ばす後半の怒濤のパワーが絶賛されているのです。

 同じことが『灰瞳に機す』にも言えます。選択肢が出現してからの展開は、寝食を忘れてのめり込んでしまうほどの吸引力でした。心をナイフでグイグイと抉るような容赦ないテキストに怖気を走らせていたら、まさかのどんでん返しにビックリ仰天。また、ひぐらしにはファンタジー要素がありましたが、本作はそれに一切頼っていません。ここも私が評価したいポイントです。

 あくまで少女への愛に殉じる覚悟の主人公。そして少女を取り巻く悲劇。この二本の柱には確固たる、物語としての想像力豊かな芯が通っているのです。多少欠点があっても面白いシナリオを読みたい! そう考える人は迷わずプレイしてみてください。

 


 

 以上は数年前、私が「GAMOOK」という同人誌に寄稿した紹介文です。そのまんま転載しましたが、我ながらよく書けたレビューなんじゃないかなと思っています。
 2009年、『灰瞳に機す』はサークルお茶みどりより完全版がリリースされました。ノベルゲームにおける選択肢の重要性をこれほどまでに突き詰めた作品は、そうありません。ひぐらしとの比較をする人が少なくないのですが、こちらのほうがずっとわかりやすく、プレイ時間も何十時間もかかるということはありません。それでも10~15時間くらいはかかりますかね。

 本作はダウンロードサイトで購入できます。しかも当時の頒布価格よりずっと安く! まだ未プレイの人は、全力でオススメします。決して損はさせないと約束しましょう。

灰瞳に機す